米連邦最高裁、ジェンダー平等に画期的判決

―保守派が多数の状況を乗り越えて


黒人男性の死亡事件により、アメリカでは連日抗議行動が続いています。そんな中で、6月15日、連邦最高裁判所が画期的な判決を出しました。


職場において、同性愛者やトランスジェンダーの人たちに対する職場での不当な扱いが違法だするという判決を下しました。この判決について詳しく見て行きたいと思います。判決文(英語)はこちらから見ることができます。




この判決要旨は、性的マイノリティであることを理由に労働者を解雇することは1964年に出された「Civil Rights Act」の第7条(アメリカは日本とは法律の構成が違うので7「条」と訳すのは正しくはないです、正式名称は「Title VII」です)に違反するということです。この条文は「人種、カラー、宗教、性(sex)、国籍によって雇止めをしたり、解雇したり、差別したりすること」を禁止しています。このような条文があるなら、この判決は当たり前だと思うかもしれません。


しかし、判決文も指摘していますが、この「性(sex)」というのは(特に異性愛者の)男性(male)と女性(female)のことを指すと解釈されてきました。事実、訴えられた側はこれを理由に、同性愛者やトランスジェンダーであることを理由に差別したことは違法ではないと主張しました。これは、日本国憲法の24条で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」という条文の「両性」が異性愛者の男女のことのみを指していると「解釈」されており、同性婚が認められないことと同じように捉えられます。



この点について、アメリカの連邦最高裁判所はこの「性」が同性愛者やトランスジェンダーの人にも当てはまるとして、次のように述べています。



Because discrimination on the basis of homosexuality or transgender status requires an employer to intentionally treat individual employees differently because of their sex, an employer who intentionally penalizes an employee for being homosexual or transgender also violates Title VII. 
(訳:同性愛者やトランスジェンダーに対する差別によって、雇用主は意図的に個々の従業員に異なる扱いをするので、意図的に同性愛者やトランスジェンダーであることを理由に従業員に不利益を負わせる雇用主は第7条に違反している。)



この訴訟は同性愛者やトランスジェンダーであることをカミングアウトした人が解雇されたことにより起きています。この文章から見るに、連邦最高裁は解雇だけでなく「意図的に不利益を与える扱い」してはいけないと述べていると受け取れます。裁判で問題になっている解雇の問題だけでなく、職場における差別全般を違法だとしたことは非常に画期的です。この判決を受けて、性的マイノリティの労働者は不当な扱いについて「違法だ」と司法のお墨付きの下で主張できるようになります。多くの会社の雇用主はこれまで以上にジェンダー平等に配慮した職場環境を求められることになるでしょう。こうやって社会が変化していくのですね。





最後に、トランプ氏が大統領になったことにより最高裁の判事は保守派の共和党員が多数を占めていました。そのため、正直このような判決が出ることを想像している人は多くなかったのではないかと思います。その意味でも、このような判決が出たことは画期的と言えるのです。



お読みいただきありがとうございました。

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